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【コラム】施術中に聞く「邪気」とは?東洋医学での本当の意味
こんにちは、健美堂の松田です。
施術中に、私は「邪気(じゃき)」という言葉を使うことがあります。
「ここは邪気が強いですね」。施術中にそう聞いて、目に見えない悪いものや、霊的なものを思い浮かべた方もいるかもしれません。
東洋医学でいう邪気は、それとは少し違う意味の言葉です。このコラムでは、施術中に聞く「邪気」が、体のどんな状態を指しているのかをお伝えします。
東洋医学の「邪気」は、不調を起こす要因のこと
東洋医学では、体を守り、正常に働かせる力を「正気(せいき)」と呼びます。これに対して、不調を起こす要因を「邪気」と呼びます。
同じ寒さの中にいても、風邪をひく人とひかない人がいます。東洋医学では、この違いを正気と邪気の力関係で考えます。東洋医学の古典にも、「正気が体の内にしっかりあれば、邪は入り込めない」という考え方が記されています。
体の外から入ってくる邪気の代表が、季節や天候にかかわる六つの邪です。「六淫(りくいん)」と呼ばれています。
| 邪の名前 | 起こりやすい季節・環境 | 体に出やすいこと |
|---|---|---|
| 風邪(ふうじゃ) | 季節の変わり目、すきま風 | 寒気、頭や首のこわばり、症状があちこちに動く |
| 寒邪(かんじゃ) | 冬、冷房 | 冷え、こわばり、冷えると強まる痛み |
| 暑邪(しょじゃ) | 真夏 | ほてり、汗が多い、だるさ |
| 湿邪(しつじゃ) | 梅雨、雨の日、湿気の多い場所 | 体の重だるさ、むくみ、胃腸の不調 |
| 燥邪(そうじゃ) | 秋から冬の乾燥した時期 | のどや肌の乾燥、から咳 |
| 火邪(かじゃ) | 熱がこもったとき | 強いほてり、のどの痛み、口の渇き |
「かぜ」を「風邪」と書くのは、この考え方の名残です。
体の中で生まれる邪もあります
邪気は、外から入ってくるものだけではありません。体の働きが乱れることで、体の中で生まれる邪もあります。
- 痰湿(たんしつ):水分の巡りが滞って、体にたまった余分な水。重だるさやむくみ、胃もたれにつながることがあります
- 瘀血(おけつ):血の巡りが滞った状態。決まった場所の痛みや、肩こり、冷えにつながることがあります
強いストレスや緊張そのものは、東洋医学では「邪」とは呼びません。ただ、それが長く続くと気の巡りが乱れ、その結果として体の中に邪が生まれやすくなる、と考えます。
脈と舌で、「補う」か「取り除く」かを見ています
同じ「肩がこる」でも、その奥の状態は人によって違います。東洋医学では大きく二つに分けて考えます。
- 実(じつ):邪気が強く、それが体の巡りを邪魔している状態
- 虚(きょ):正気が弱って、体を守る力が足りない状態
実が中心なら邪を取り除く施術(瀉法・しゃほう)、虚が中心なら正気を補う施術(補法・ほほう)を選びます。実際には両方が混ざっていることも多く、その割合は日によっても変わります。

健美堂が毎回、脈と舌を確かめるのは、このどちらに傾いているかを見るためです(なぜ毎回、脈を診るのか)。
もうひとつ、鍼を持つ手の感覚もあります。邪気が強いところに鍼を入れると、ツボの表面で邪気が鍼に絡むような手応えがあり、患者さんも痛みや響きを強く感じやすくなります。施術中に「ここは邪気が強いですね」と言うのは、この手応えがあったときです。これは25年以上の施術の中で、私の手が覚えてきた感覚です。
「なんとなく重い」その感覚を、体の言葉で
「邪気」という言葉は、昔から医学の外でも使われてきました。節分の「邪気払い」のように、悪いものを遠ざけるという意味で、暮らしの中に根づいてきた言葉です。最近では、目に見えない悪い気配や、心の状態を指して使われることもあります。
そうした使い方を否定するつもりはありません。ただ、健美堂で施術中に使う「邪気」は、体の状態を指す言葉です。
体の不調を「なんとなく重い」「何かがたまっている感じ」と表現される方もいます。その感覚は、東洋医学の言葉に置き換えられることが少なくありません。
- 雨の日に体が重だるい → 湿気の邪(湿邪)が体にたまっている状態かもしれません
- 冷房の部屋で肩や首がこわばる → 冷えの邪(寒邪)の影響かもしれません
- 季節の変わり目に頭が重い、寒気がする → 風の邪(風邪)が関わっているかもしれません
こう考えると、「悪いものが憑いた」のではなく、「体がこういう状態にある」と捉えることができます。そして、体の状態であれば、脈と舌で確かめ、鍼やお灸で整えていく道すじを考えることができます。
まとめ
施術中に「邪気」と聞いたら、「体の不調を起こしている要因のこと」と受け取ってください。
冷え、湿気、こもった熱、巡りの滞り。健美堂では、それがどこに、どれくらいあるのかを脈と舌で確かめながら、補うか取り除くかを決めています。
言葉の意味が気になったときは、施術中でも遠慮なくお尋ねください。