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胃カメラで異常なし。それでも胃もたれが続くのは、なぜか。
こんにちは、健美堂の松田です。
「胃もたれや、みぞおちのつかえが続く。けれど胃カメラを受けても、特に異常はないと言われた」——そんな経験をお持ちの方は、少なくありません。検査で異常がないと言われると、つらさの行き場がなくなってしまう。気のせいだと片づけられて、もやもやしたまま帰ってこられる方もいます。
でも、検査で見えないことと、つらさがないことは、別の話です。
「異常なし」は、不調がないという意味ではありません
胃カメラや血液検査をしても、潰瘍やがんといった「形の異常」が見つからない。それでも続く、食後のもたれ・すぐ満腹になる感じ・みぞおちの痛みや灼熱感。こうした状態は「機能性ディスペプシア」と呼ばれ、世界共通の診断基準(ローマ基準IV、2016年)で定義された病気です。
症状の出方で、大きく二つに分けられます。食後のもたれや早期の満腹感が中心の「食後愁訴型」と、みぞおちの痛みが中心の「心窩部痛型」で、前者のほうが多いとされています。
そして、これはめずらしいものではありません。

日本消化器病学会のガイドラインによれば、健康診断を受けた人の11〜17%、上腹部の症状で医療機関にかかった人では45〜53%に見られると報告されています。世界の調査をまとめた研究でも、検査前の段階で胃の不調を訴える人は約21%にのぼります。「異常がないのに、つらい」のは、あなただけではないということです。
なぜ、検査で異常がないのに胃が動かないのか
形に異常がないのに不調が続く。その背景には、胃の運動の異常、胃が刺激に敏感になる内臓知覚過敏、そして心理社会的なストレスなどが、複雑に重なっていると考えられています。
胃の動きが落ちれば、食べたものをうまく送り出せず、もたれや早期の満腹感につながります。胃が敏感になっていれば、少しの張りでも強い不快感として感じられる。さらに、脳と胃腸は神経で密接につながっており(脳腸相関)、不安や緊張が胃の働きに影響することもわかってきました。
胃そのものよりも、「胃を動かす力」と「心と体のつながり」の問題——そう考えると、検査に映らない理由も腑に落ちてきます。
東洋医学は、「胃」ではなく「胃を動かす力」を見ています
東洋医学では、食べたものを消化し、エネルギーに変える働きを「脾胃(ひい)」と呼びます。胃カメラが胃の「形」を見るのに対して、東洋医学が見るのは、この脾胃の「働き」と、全身の「気の巡り」です。
消化する力が落ちて冷えやすい方、ストレスや緊張で胃が締めつけられるように感じる方、食べすぎ・水分のとりすぎで胃に停滞が起きている方。同じ「胃もたれ」でも、体質によって背景は異なります。健美堂では、脈診・舌診で一人ひとりの状態を確かめ、どこに偏りがあるのかを見極めたうえで、整え方を考えていきます。
鍼には、どのくらいの裏づけがあるのか
「東洋医学的にはそう考える」だけでなく、近年は質の高い研究も重ねられています。
2020年、医学雑誌『Annals of Internal Medicine』に、食後愁訴型のディスペプシア278名を対象にした臨床試験が報告されました。本物の鍼と「見せかけの鍼(偽鍼)」を比べたところ、4週間後に改善を実感した人は鍼治療で83.0%、偽鍼で51.6%。効果は治療後の追跡でも保たれ、重い副作用はありませんでした。

ただし同じ研究で、三つの主な症状がすべて消えた人は鍼治療でも27.8%(偽鍼17.3%)。鍼は誰にでも劇的に効く魔法ではない、ということも同時に示しています。複数の研究をまとめた近年の分析でも、鍼は偽鍼や通常の治療と比べて症状と生活の質を改善する可能性が高いとされています。
大切なのは順番です。胃の不調が続くときは、まず医療機関で胃カメラなどの検査を受け、重い病気がないかを確かめること。機能性ディスペプシアの診断では、がんを含む器質的な病気をきちんと除外することが何より重要です。鍼灸はそれに代わるものではなく、「検査では異常がないのに続く不調」に補完的に寄り添う方法だと考えています。
今日から、ご自宅でできること
すぐにできる手当てを、ふたつだけ。
ひとつは、食べ方を少し変えること。一度に詰め込まず、よく噛んで、腹八分で箸を置く。胃の負担をへらす、いちばん地道で確かな方法です。
もうひとつは、お腹を冷やさないこと。みぞおちとおへその中間あたり(中脘・ちゅうかん)を、手のひらでそっと温める。湯たんぽや蒸しタオルでも構いません。緊張で固くなったお腹が、ふっとゆるむことがあります。
まとめ
「異常なし」と言われても、つらさは本物です。形ではなく働きの問題なら、整えていく道があります。みぞおちの不快感が長く続いてお困りの方は、機能性ディスペプシアの症状ページもあわせてご覧ください。
参考:日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)」/Yang JW, et al. Effect of Acupuncture for Postprandial Distress Syndrome. Ann Intern Med. 2020;172:777-785.